フォレストプラス名画座

館主からのご挨拶

 

ようこそフォレストプラス名画座へお越し下さいました。

 

今回は海外では高い評価だったり、話題作ながらも日本では惜しくも劇場未公開でソフトリリースのみの作品を取り上げます。秋に鑑賞するのに最適な作品ばかりです。 それではごゆっくりとお楽しみくださいませ。


それでは、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ。

 

館主 わたなべ りんたろう

セックス・カウントダウン 

「セックス・カウントダウン」は原題を” Sex and Death 101”という07年の作品だ。

今作は製作発表のニュースを知ったときから、とても見たい作品だった(「映画秘宝」のあとがき欄にも同様のことを書いたぐらいだ)。その理由は監督・脚本がダニエル・ウォーターズだったからに尽きる。

ダニエル・ウォーターズは傑作「ヘザーズ」(89)の脚本で一躍注目された異才である。「ヘザース」は今やカルト映画であるが、初めてスクリーンで観たときは、あえて脚本の約束事を破っているようなところと、ダイアログ(台詞)の斬新さにとても魅力があった。

タランティーノと同じくビデオレンタル屋のアルバイトで食いつないでいたダニエル・ウォーターズは「ヘザース」一作で注目され、アクション映画の有名プロデューサーのジョエル・シルバーなどに気に入られて、「フォード・フェアレーンの冒険」、「ハドソン・ホーク」、「バットマン・リターンズ」、「デモリション・マン」などの脚本を書く。

だが、多くの作品で思うように個性は発揮できなかった。原案も担当した「バットマン・リターンズ」は例外で、ティム・バートン監督作及び「バットマン」シリーズの中でも随一の異色の傑作に仕上がっている。「ヘザース」のマイケル・レーマン監督と再度タッグを組んだ「ハドソン・ホーク」は今やカルト映画だが、当時は大不評で、このこともあってダニエル・ウォーターズは活動を止めてしまう(余談だと、兄のマーク・ウォーターズが00年版「ヘザース」とも言える「ミーン・ガールズ」の監督である)。

 

大学で脚本などを教えていたダニエル・ウォーターズが再び動き出したのは「Happy Campers」(01)だった。低予算の青春映画ながら、ひねった視点やダイアログにダニエル・ウォーターズらしさがうかがわれる作品だった。そのダニエル・ウォーターズの本格的な復帰作が「セックス・カウントダウン」なのである。

「ヘザース」以来、交流のあるウィノナ・ライダーをヒロインに迎えていることからも意欲がうかがえる。

主演はオーストラリア出身で「ランド・オブ・ザ・デッド」を経て「プラダを着た悪魔」で注目されたサイモン・ベイカー。

ストーリーは「人気のファースト・フード・チェーンを経営するロデリックは数々の女性と浮き名を流してきた色男もいよいよ結婚も間近にせまっていた。だが、そんな彼に届いた1通のメールが運命を変える。そのメールには今までに関係をもった女性と、これから関係を持つ女性の名前が記されていた・・・」。

 

原題にある「101」とは101人の女性のことなのだ。これから関係を持てる女性とのことを考えて、婚約を破棄する主人公には共感できないし、ただ、メールにある順番通りに女性と情事を重ねるストーリーは、展開が分かっていて普通に考えたら面白くない。

だが、そこはダニエル・ウォーターズなので、ブラックユーモアの異色作として見せきる(かなりブラックである)。

このブラックさが、アメリカでも否定評の要因になっていたが、ダイアログは抜群だし、あえてこういうストーリーにチャレンジする姿勢は評価したい。1度目に見たときよりも2度目に見たときのほうが作り手の狙いがはっきり分かって抜群に面白かった(アメリカでも、そのような評価が出始めている)。ラストの主人公の台詞にも共感できるだろう。是非見てほしい作品だ。

『セックス・カウントダウン』 (C)2007 S&D Productions, LLC.

出演者: サイモン・ベイカー/ウィノナ・ライダー/レスリー・ビブ/パットン・オズワルト


監督: ダニエル・ウォーターズ

「セックス・カウントダウン」に絡めて紹介するのは、同じく劇場未公開で最近になって日本ではDVDリリースのみされながらも見応えのある作品の2本だ。
まずは「ゴーン・ベイビー・ゴーン」から紹介しよう。

 

今作は俳優のベン・アフレックの監督デビュー作で、原作は「ミスティック・リバー」と同じ作者のデニス・レヘインの「愛しき者はすべて去りゆく(原題”Gone, Baby, Gone”)」の映画化である。

「ミスティック・リバー」と同じく、ボストンが舞台で、デニス・レヘインらしい家族をテーマにしたスリラーである。主演はベン・アフレックの弟のケイシー・アフレック、ヒロインに傑作「キスキス、バンバン」以降は売れっ子のミシェル・モナハン、脇を実力派のモーガン・フリーマンとエド・ハリスが固める。ベン・アフレックの見事な演出も見ものだが(共同で脚本も執筆)、アカデミー賞助演女優賞にノミネートされたエイミー・ライアンの演技も見事だ。エイミー・ライアンは、絶賛されたシドニー・ルメット監督の新作で今秋に日本公開の「その土曜日、7時58分」でもイーサン・ホークの妻を演じている。

 

製作会社がアラン・ラッド・カンパニーなのにも注目だ。アラン・ラッド・ジュニアが運営する「ブレード・ランナー」や「ライト・スタッフ」で知られる製作会社で、久しぶりに会社のロゴを見た。俳優としては下降線を辿っていたベン・アフレックが再起をかけた監督作に、力を貸しているのが、アラン・ラッド・カンパニーなのはアメリカ映画界の良心を見た思いである。

とても見たい作品だったので、輸入DVDを購入して見ていたが、劇場公開されてもおかしくないレベルだけに日本での未公開が実に惜しい作品だ。原作の私立探偵のパトリックとアンジーの主人公はシリーズ化されているので、シリーズの他の作品の映画化もいつかされることを楽しみに待ちたい。

『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

出演者: ケイシー・アフレック/ミシェル・モナハン/モーガン・フリーマン/エド・ハリス/エイミー・ライアン
監督: ベン・アフレック
原作: デニス・レヘイン

「サウスランド・テイルズ」は監督デビュー作の「ドニー・ダーコ」で注目された若き鬼才のリチャード・ケリーの06年作品。

カンヌ映画祭に出品されたが、酷評され、アメリカ公開もかなり限られた公開だった。しかし、熱狂的なファンが付き、早くも現代のカルト映画のようになっている作品だ。

 

内容は、2008年の7月4日のアメリカの独立記念日の祝賀祭を3日後に迎えるロサンゼルスを舞台に「世界の終わり」を描いた終末論的近未来SF作品・・・なのだが、見てもよく分からないだろう。実際、分からない人が続出している。それも当然で、映画の公開前に出版されたグラフィック・ノベルが数冊あって、その後に位置するストーリーなのだ。だから、設定や登場人物の考えや動きがとても分かりにくい。

 

計算済みの混乱なのだが、この混乱=カオスにノレるかどうか145分の本作を気に入るかどうかの分かれ目でもある。リチャード・ケリーは撮影は終了している監督第3作のキャメロン・ディアス主演のスリラー「The Box」は初の原作ありなので、今までとは違った出来になるかもしれない。

 

『サウスランド・テイルズ』

出演者: ザ・ロック/サラ・ミシェル・ゲラー/ショーン・ウィリアム・スコット/マンディ・ムーア/ジャスティン・ティンバーレイク
監督: リチャード・ケリー


映写室より

  今年は主催していた「ホット・ファズ」の公開署名運動が無事に実り、公開にいたった。

予想以上のヒットになり、現在、「ホット・ファズ」は全国で公開中だが、今回紹介した3本や前回紹介の「マーゴット・ウェディング」のように、スタッフやキャスト及びその出来から日本公開してもおかしくない作品が多くある。

今は劇場公開の作品はメディアで見ることがあるが、DVD紹介のメディアは限られている。だからこそ、上記の文章に書いたように、レンタルDVDショップやセルDVDショップに行って、棚をのぞくことも必要になってくる(今回、取り上げた「セックス・カウントダウン」は家の近所のレンタルDVDショップ「V.REX」に行って、棚にあるのを見て気付いた)。ネットでも分からないリリース作があるのだ。過去にも、出演・脚本のビリー・ボブ・ソーントンが注目された92年の「運命の引き金」(原題”One False Move”)のような良作との出会いが個人的にもあったが、足を使って良い作品と出会うこともおすすめしたい。

 

「ホット・ファズ」劇場公開を求める会
http://intro.ne.jp/contents/hotfuzz.html

 

またのお越しを心よりお待ちしております。

館主 わたなべ りんたろう

《今回の上映作品》

『セックス・カウントダウン』

『ゴーン・ベイビー・ゴーン』

『サウスランド・テイルズ』

バックナンバー