単行本全34巻。累計発行部数累計1500万部を超える大ヒットコミック「BECK」が、水嶋ヒロ、佐藤健、桐谷健太、忽那汐里、中村蒼、向井理という今もっとも人気のある若手キャストを迎えて、完全実写映画化! そんな話題の一作に、バンドのムードメーカーとしてカリスマ性を発揮する千葉こと千葉恒美を演じたのが、近年出演作が相次ぐ桐谷健太。劇中秘話や原作への想い、俳優としての知られざる道のりなどを赤裸々に語ってもらった。

■取材・構成・撮影/床板京平(OFFICE NIAGARA)

千葉の気持ちで歌詞を自作! 桐谷流ラップは褒めラップ?

―― 千葉という男はボーカル&ラップ担当で、メンバー内でも血気盛んな若者でしたね。

もともとバンド活動は高校のころにちょっとやっていましたが、ラップは誰かに正式に教えてもらったことはなくて、普段酒に酔った勢いでフリースタイルでやっていたんですよ(笑)。何年か前の映画でストリートミュージシャンをやりながら役者やっているヤツがいて、ある日の待ち時間に呼ばれて、片方の耳にイヤホンを付けられて。そのときにいきなりふられて、初めてラップをやってみたんです。そこから酔っ払うたびに遊びでやっていましたね。俺はdisらない褒めラップなんですが、そういう体験でもちょっとは今回の役に立っていたとは思いますね。

 ―― ラップを人に見せるためではなく、あくまで自分の趣味としてやっていたのですね。

いやでも、「うっとうしいちゃうんかな」と思ったことはありましたね(笑)。ただ、酔っ払ってやっていた時期に、すごく喜んでくれる人もいたんですよ。すごく褒めるから(笑)。その人のいいところを言うわけですからね。自分でもビックリするぐらいきれいに言えた瞬間もあって、『BECK』の準備期間なんて、10分間ぐらいあれば言える感じになっていましたね。フリースタイルのラップのシーンがあるんですが、歌詞は全部自分で書いてやりました。

 ―― もともと脚本に歌詞が書いていなかったから自分で考え出したということですか?

最初はト書きしかなかったんです。どうするんだろうと思って、「一度自分に書かせてくれますか?」とお願いしました。もう撮影が始まっていましたが、堤(幸彦)さんに書いたものを見せたら、「これでいいじゃないか」と言って下さいました。千葉の気分で書いていたんですが、「千葉ならdisらないだろう」と。「どちらかといえば自分と向き合っているような言葉になるだろう」と思いながら書いていたので、気持ちよかったですね。2個作ったけれど、1時間はかからなかったです。ホンマに気持ちよかった。けっこう自由にやらせていただきましたね。

千葉役にピッタリと周囲が絶賛! 原作へのオマージュも込めて熱演!

―― 「ROOKIES -卒業-」ではアイデアを出されたそうですが、今回はどうでしたか?

今回の千葉は、ホンマにいろいろな人から「絶対に合う! 似てる! 雰囲気も一緒や!」 と言われていて、ものすごい自信マンマン、似せる気マンマンでいきました(笑)。役にホレ込んでいたというのがありますし、そのほうが面白いんじゃないかと思ってそうしていましたね。だからといって「ROOKIES -卒業-」の平っちがそうじゃないとは言わないですが(笑)、千葉の場合、髪型とヒゲも同じような感じにして、ラップの動きも勉強しました。

 ―― 千葉を演じる上での、桐谷さんなりの原作へのオマージュがあったと聞いています。

ああ、そうですね(笑)。オマージュとしては、引きのショットなので、そんなに映っていないんですけど、「原作にあったポーズが使えるな」と思ったものを採り入れました。途中までは自分の気持ちだけでやっていましたが、だんだん「千葉の、原作に出てくる動きも入れたいな」と思うようになっていきました。いやあ、でもホンマに楽しかった(笑)! 早く色々な人に観てほしいですね。映画は観てもらって初めてのところがありますからね。

獲ったる! という強い気持ちがなければ、今の自分はなかった

―― 壁にぶつかって立ち止まる場面がありましたが、もしご自身ならどう回避します?

いや、回避はできないでしょう。できたら、皆その道具を使います(笑)。とことん闘っていくしかないというか、目をそらせばそらずほど追いかけてきよるし、悩みって怖いけれど、向き合うしかない。そのときに出る答えもあるだろうし、ずっと悩み続ければ、「もうええか!」みたいなことにもなる。それはそれで答えやし、あまり考えすぎないほうがいい。考えすぎると、今を生きていないような気がして、それは今の自分に失礼なのかなと思いますね。

 ―― 現実逃避などと言いますが、逃避とは言いながらも、結局は逃げられないものだと。

逃げていても絶対ついてきよる。追いかけられないぐらいダッシュで逃げたらわからないですけれど(笑)。それぐらいの逃げっぷりであれば逃げられるかもしれないけれど、普通は闘うしかないですよね。みんな辛い時期って、多かれ少なかれあると思いますが、俺は21歳のときが一番辛かった。ちゃんとデビューができず、ホンマにきつかったけれど、経験できてよかった。毎日金縛りみたいな。でも家族と友人が支えてくれたおかげで、ボコボコにされて絶望を感じながらも、「どこかで俺は絶対にいける!」という根拠のない自身だけはありました。

 ――そんな人生の崖っぷちに立たされたときというのは、どんなことを思うのですか?

「ほとんどの人は、こうして実家に帰るんだろうな」と思いました。それでも俺が何でやれたかというのは、アホやったから(笑)。本当に根拠がない。役者って才能も大事ですが、パワー、エネルギーですね。「獲ったる!」という気持ちがホンマに強ければ獲れると思う。夢は叶うと信じたら叶うと言うけれど、それだけじゃダメで、「獲ったる!」というギラギラしたパワーやエネルギーがあれば、才能がなくてもいけると思う。まあ、そこから持続するかどうかは別問題だとは思いますが(笑)、基本的には絶対的なパワーとエネルギーです。

芝居であって芝居じゃない演技をする人がいたら、ファンになる

 ―― そうして現在に至って、今改めて、俳優に必要とされることとは何だと思いますか?

色々なことを経験していたり、色々なことを持っていたりすることというのは、俳優にとってすごく大事なことだと思うんですよ。色々な人に会ったり、色々な景色を見るということ、あと音楽を聴くこともそうです。そこでしかもらえない、初めての感情が絶対にある。そういう経験や感情が役を通して出る瞬間というのは、観ているほうにしても、“芝居であって芝居じゃない瞬間”に、感動するんじゃないかなと思いますけどね。

 ―― なるほど。人生の経験値を上げておくことが、芝居の極意へと繋がっていくような。

ただ、芝居は全神経を注いでやりたい。「そいつ(役)の人柄はどうなんだ?」と考えて、考えた中から出すけれど、出すためにはテクニックが絶対にいる。だからテクニックも絶対に大事なんです。持っていても、出せないと意味がないから。だから、俺の場合、そういう芝居をしている人を観たら、ほんのワンシーンでもその芝居が見えたら、けっこうずっとファンやったりしますね。

 ―― 桐谷さんのファンが多いのは、実はそういう理由があるからなのではと思いますが。

いやいや(笑)。今回のこの映画で言うと、実は千葉もそういう人間で、決して天才ではないけれど、一生懸命にやっていて、テクニックも磨こうとしている。「自分はどうなんだ?」 って、本気で気がついた瞬間に天才を越えるというか、そういうことって現実にあると思うんですよ。自分らしく生きる、自分らしくいることって、実はすごく大変だけれど、たとえば嫌なことがあって泣きたいときは泣けばいいし、そういうことが一番大事な気もしますよね。

 

プロフィール
桐谷健太(千葉恒美 役)

1980年生。大阪府出身。2002年、テレビドラマ「九龍で会いましょう」でデビュー。映画の出演作に、『ゲロッパ!』(03)、『クローズZERO』(07)、『クローズZERO II』(09)、『ROOKIES -卒業- 』(09)など多くの話題作があり、テレビドラマでも「流星の絆」(08)、「JIN -仁- 」(09)など高視聴率作品に出演。個性派俳優として広く活躍中。2010年は、ドラマー役を演じた『ソラニン』(10)、宮崎あおい、大竹しのぶと共演した感動作『オカンの嫁入り』(10)などのほか、NHK大河ドラマ「龍馬伝」にも出演を果たした。また、8月には自身初の撮り下ろし写真集の「野良犬」を発売。俳優としての枠組みを越えて才能を発揮し続けている。

■桐谷健太オフィシャルサイト:http://www.hot-road.jp/kiritani/

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