
宇宙一ロックンロールな天才芸術家・楳図かずおを初めて追い、その日常に迫ったドキュメンタリー映画『グワシ!楳図かずおです』が、この夏大阪に上陸! 楳図の公式サイトを運営するスタッフ、伊藤弘二氏が監督を務め、二人三脚で楳図のプライベートを浮き彫りにしていく、そのリアルな息遣いが話題になった逸品だ。「人を楽しませることが大好き!」という根っからのエンタティナーの楳図先生に映画が公開される心境などを聞いた。
■取材・構成・撮影/床板京平(OFFICE NIAGARA)
高い機材を買っちゃったので後戻りができない!? 意外な誕生秘話!!
―― 先生のプライベート映像が満載ですが、最初のきっかけは何だったのでしょうか?
きっかけは僕のほうからではなくて、伊藤(弘二)さんのほうから撮りましょうと。それまではテレビ番組の取材などでドキュメンタリー風の取材が何回かあった程度で、そんな中でドキュメンタリーの話をしているうちに自分たちでもできますよと。そのうちに「中古屋さんでカメラを買いましたー!」と言ってきて、その次からはカメラ持参でやってきて、あちこち撮り始めて(笑)。そんな状態がスタートだったと言えば、スタートでしたね。
―― なるほど。最初は記録が目的のようなイメージで始めて、次第に本格化していった。
いろいろとイベント映像などを撮ってはいたのですが、撮ったはいいものの、発表する媒体がなかったわけです。だったら最初から映画というものを目標として作ってしまえば、面白くなるのかなあと。映画ということで始めてしまえば真剣に撮りますし、最初は5~6万円程度のカメラでしたが、最終的には本格的に映画が撮れるほどの機材を30万円ぐらいかけて購入したそうです。買ったらもう後戻りできないので、30万円分は頑張らないと(笑)。
―― 先生も積極的に協力するということにして、映画化に向けて動き出したのですか?
いや、協力するという感覚ではなくてですね、もともといつも横で撮っていらっしゃったので、僕の中では日常的な出来事の延長線上のイメージでした。どこからドキュメンタリー用の映像を撮る、というような決めごとはまったくなくて、いつものようにカメラを回して、そのカメラが小さいものから高価なものに代わったようなもので。特に撮られているという感覚もなかった。僕は僕で、そのときどきのイベントをこなしているだけでした。
物事を始めるのに年齢は関係ない。出し抜けの行動力こそ大事!!
―― ファンにとっては先生の素顔や日常の映像が満載で、貴重な映画になりましたよね。
そうですね。そういう機会になったと思います。たとえば楽屋裏には一般のファンの皆さんは入ることはないので、そういうところにカメラが入って行けたという意味では、貴重な映像と言えますよ。「まことちゃんダンス」の振り付けを稽古してから本番に入る映像がありますが、そんな稽古の風景も観ることができるので、「ああ、稽古している」と思ってください(笑)。何か始めるのに年齢は関係ないという勇気をもらえるかもしれません(笑)。
―― 確かに。「まことちゃんダンス」では、年齢を感じさせないダンスを披露しています。
いえいえ。日ごろから運動など、特に何かをしているわけじゃないんですよ。普通に街を歩いているだけで、それも気晴らしのような感覚なんです。散歩のように「歩こう!」と思って歩いているわけじゃないんですよね。以前、高尾、立川間を歩きましたけどね。出し抜けにいっぺん歩いてみようと思い立って歩きました。遠かったー(笑)。急に思い立つんです。朝早く目覚めたら、「えい! 行こう!」と。そんな感じでした。ノリですよね(笑)。
―― 高尾、立川間は、JR中央線の快速系でも20分弱かかりますからね(笑)。遠いです。
ええ。けっこう遠かったです。(笑)。それに道が真っ直ぐにつながっているわけじゃなくて、川が2か所ほどあるんですよ。橋を渡らないと辿り着けないのですが、その橋がどこにあるのかがわからなかった(笑)。でも、それを確かめたかったというのもありましたけどね。ちなみに朝の5時30ぐらいに高尾を出て、八王子のホテルで朝食を食べたりしていたけれど、立川に着いたのが、だいたい9時20分ぐらいだったと思います。頑張りました。
今後は監督業にも!? 毎年楳図かずおを届けられるようにしたい!!
―― そういえば劇中でもお台場のビーナスフォートなどを訪れていて、行動派ですよね。
ああいう空間がとても楽しいので、よく行くんですよ。ちょっと外国に行ったような気分になれるじゃないですか。今はないかもしれませんが、触れると逃げていく足元に照らされた鯉の照明なども映画には入っているんじゃないでしょうかね。ほかにも横浜から元町、外人墓地を降りて山下公園に出て、みなとみらいに行って帰って来るとか。後は鎌倉ですね。江ノ島まで歩くとか。けっこう歩くことは好きです。気晴らしには最高だと思います。
―― ごく一般的な漫画家さんのイメージとして、散歩というのはよくあることですよね。
職業柄ということもあるのかもしれませんが、昔からそうです。場所が変わると見えるものが新しいので、自然と気分転換になります。アイデアを考えるときに家の中ばかりだと息がつまってしまうので、それでぶらぶらと歩きながら考えるという習性は田舎にいたころからありました。実は20歳代のころに不眠症やひどい肩こりになってしまって、これはいけない、運動不足だと思って始めました。1か月ぐらい家にこもることもありましたから。
―― さて最後になりましたが、ご自身の映画が届けられる今の心境はいかがでしょう?
日々いろいろなことをやらせていただいていますので、その中の1つという位置づけになっているとは思います。取り立てて特別なことをしたという気持ちはないのですが、とにかく大勢の人たちに観ていただければと思っています。そうすれば伊藤監督が喜ぶかなあというところです。毎年何かしら原作の映画化があって、僕の監督作品が延期になっているので、その間のお楽しみ(笑)。毎年何かしらお楽しみがあればいいなあと思っています!
プロフィール
楳図かずお(漫画家・タレント・作詞家)
1936年生。和歌山県出身。数々のホラー作品を生み、“ホラー漫画の神様”と呼ばれるように。1976年には「まことちゃん」を発表。ギャグの“グワシ”は社会現象を巻き起こした。
■オフィシャルサイト:http://umezz.com/jp/
バックナンバー
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