
先日、惜しまれつつもこの世を去ったエリック・ロメール監督の最後の監督作品となったのが『我が至上の愛 ~アストレとセラドン~』(2007)。この作品のヒロインを演じたステファニー・クレイヤンクールへの単独インタビューを掲載させていただきます。
※このインタビューは2008年フランス映画祭の来日時のインタビューです。
フランス、ヌーヴェル・ヴァーグの中心人物の1人で、来年で90歳になるフランスの映画界の重鎮監督エリック・ロメールが、17世紀の小説家オノレ・デュルフェの大河ロマン小説「アストレ」を映像化した『我が至上の愛 ~アストレとセラドン~』。5世紀という時代を背景に、若い男女の恋愛模様を美しい大自然とともに描いて、恋や愛の本質を現代に問い直す文芸大作だ。モデル出身のアンディー・ジレとともに、新進女優のステファニー・クレイヤンクールが、映画初出演ながらヒロインを好演。ロメール監督との仕事や、将来の目標などについて語ってくれた。
■取材・構成・撮影/床板京平(OFFICE NIAGARA)
この映画に出演できたことが、自分にとって最大のプレゼント!
―― 今回が初来日だそうですね。日本の印象はいかがですか?
とってもクレイジーな感じがする(笑)。表参道や原宿に行ったけれど、すごく気に入ったわ(笑)。
―― 映画初出演で初主演の大任をこなされたわけですが、感想はいかがですか?
処女作で初主演だったのよ。撮影のすべてに立ち会っていたわけではないし、自分の出演シーンしか詳しくは知らないけれど、この映画に参加したことは、今思えば自分にとって名誉なことだったと思うわ。ロメール監督の作品というのは、今は少なくなってしまった作家もので歴史ものの作品であり、大変なリスクがあったけれど、理想を求めた作品だったの。そういう作品の擁護者の一員になれたことがすごく誇らしいし、わたしにとっては最大のプレゼントだったと思うわ。
―― ロメール監督は重鎮ですよね。撮影現場ではどのような感じでしたか?
わたしとロメール監督の関係は、孫とおじいさんみたいなもので(笑)、それだけ年代が違うの。ただ、単純に年齢だけではなくて、本当のおじいさんのようにわたしを全面的に信頼してくれたわ。わたしが演劇や映画の出演経験がないにもかかわらず、100パーセント信頼してくれたことは、わたしにとっては贈り物だったと思うし、信頼してくれたこと自体がマジカルに近かったわ。
プライベートの恋愛は、純愛を含めて、いろいろありました……
―― 演技の経験がまったくないと思えないほど、映像からオーラが出ていました。
本当? わたしはスピリチュアルな物事に対してはセンシティブな人間なので、最高の賛辞よ!
―― ところで、原作は純愛モノの古典ですね。ご自身の恋愛観と比べていかがですか?
そもそも、わたしは純愛ものの映画に出られて、すごく幸せだったわ。純愛というのは、美しい価値観を擁護してくれるものよね。たとえば、恋人がいて、その人に自分が忠実であることを皆信じたい。だけれども、最近の映画作品というのは、いかに計算高く物事を運んでいくかとか、恋愛にしても人間関係にしても、どういう風に相手をだますのか、とても不実な作品が多いような気がするの。実生活でも、ピュアな恋愛を含めて、いろいろとあったから(笑)、人生はそんなものと思っていたけれど、この作品に出て純愛はあると信じたいと思ったわ! 信じていける、信じていこうと思ったし、信じていれば、いつかは見つかるのではと――。そう思いたいわよね。
―― ヒロインと同じような状況になったら、同じように乗り越えますか?
わたしはアストレみたいなタイプではないから(笑)、とても自立した、インディペンデントな女性として生きていきたいわ。それに、自由はわたしにとって必須なものよ。ポジティブな意味で、理想的な映画のありかた、理想的な男のありかたについて、過度な期待をしていないの。いい意味で、自分のやりたいことをやりたいわ。言いたいことは言うというタイプよね(笑)。明日どう暮らしていくかを含めて、日々の自分の考えかたを大切にしていきたいわ。わたしはいつだって心の中に冒険心を持っていたいから、アストレみたいに長い時間ただ待っているよりは、旅に出てしまいたいわね(笑)。アストレと比べると、わたしの中は自立心がより強いと思うわ。
ピアフに対してのマリオン・コティヤールの取り組みかたは尋常じゃない!
―― 今回の大抜擢を経て、女優として将来的にはどんな夢をお持ちですか?
わたしには夢がたくさんあるけど、映画監督ではジム・ジャームッシュがすごく好きなので、もし彼と1本作れたらすごくうれしい! 今回の映画で言わせてもらえれば、大人しくておりこうさんのような感じでいるけど、いつかはクレイジーな役というのをやってみたいわ。最初は音楽活動をやろうと思っていたので、今まで自分が学んできた音楽も楽しんでみたいと思っているの。
―― ミュージカル女優を目指していたそうですね。どんな音楽がお好きですか?
今ファーストアルバムのレコーディングをスタートさせる予定で、そのアルバムの中でシャルル・アズナヴールの曲も歌うの。シャンソン界では、とても大御所よね。1曲歌うのだけれど、それとは別にわたしのテイストとしてはロックも好きなの。今度はレーベルと話し合って、今のフレンチポップスみたいな軽いものじゃなくて、ロックっぽいのもやりたいなと思っているのよ。
―― アズナヴールと言えば、エディット・ピアフですが、ピアフと言えば、彼女を演じたマリオン・コティヤールが、『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』でオスカー像をゲットしましたね。
マリオン・コティヤールは大好きな女優よ。アカデミー賞をもらえたら気分が悪いことじゃないと思うし、そのことは否定しないけれども、コティヤールのオスカー獲得は、それに匹敵するほどに、ピアフの生涯を彼女が演じきったからよね。彼女の映画を観て、わたし自身もとても感動したわ。ピアフに対しての彼女の取り組みかたは尋常ではなかったと思うの。監督以下スタッフたちが、このぐらいのハイレベルの映画を作るということは、並大抵の努力じゃなかったと思うわ。信じたいテーマもたくさんあったし、そもそもピアフは神格化された人。そういう人にアタックして、あれだけの作品ができたことは、本当にオスカーに値する偉業だったと思っているわ。
―― 最後にステファニーさんから、読者に向けて一言お願いしてもいいですか?
これからこの映画を観る、特に若い女性たちにメッセージを送りたいと思うけれど、すごいシンプルで混じり気のない純愛を始め、美しい旅情、愛する者に対する忠誠心、節操があることなどを再発見してもらいたいの。そういうものがこの世にあるといことを、確認してほしいわね。この映画を観て、もう1回、恋してみたいなと思ってもらえたら、わたしはすごいうれしく思うわ。
プロフィール
ステファニー・クレイヤンクール(アストレ 役)
1984年生。もともと歌手志望だったために、ミュージカル女優を目指して、19歳でベルギーからフランス、パリへ移住。2009年日本公開の『我が至上の愛 ~アストレとセラドン~』のヒロイン、アストレ役に大抜擢され、映画初出演で初主演を見事に果たした。現在は、短編映画の出演が決まっているほかに、フランス本国では自作のCDアルバムでシャンソン歌手デビュー。劇中ではその歌声も披露している。ベルギーの大作家、マルグリット・ユスナールを大叔母に持つ。
バックナンバー
- 2010.1.22 『我が至上の愛 ~アストレとセラドン~』ステファニー・クレイヤンクール単独インタビュー
- 2010.1.15 『真幸くあらば』尾野真千子さん単独インタビュー
- 2010.1.15 『蘇りの血』草刈麻有さん単独インタビュー
- 2010.1.14 『影の交渉人 ナニワ人情列伝』竹内力単独インタビュー
- 2009.12.28 『ディア・ドクター』DVD発売・西川美和監督インタビュー
- 2009.12.25 『古代少女ドグちゃん』谷澤恵里香さん単独インタビュー
- 2009.12.25 『俺たちのキャンプ』哀川翔さん単独インタビュー
- 2009.12.21 『よなよなペンギン』りんたろう監督インタビュー
- 2009.12.18 『アサルトガールズ』押井守監督単独インタビュー
- 2009.12.18 『ハイキック・ガール!』武田梨奈さん単独インタビュー
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