
10月29日(木)現在、観客動員数10万人を突破した『テイルズ オブ ヴェスペリア ~ The First Strike ~』。同名ゲームの数年前のエピソードが描かれるファン必見の劇場版だ。歴代キャラクターで一番人気を獲得したというユーリ・ローウェルを演じた声優の鳥海浩輔氏に話を聞いた。
■取材・構成・撮影/床板京平(OFFICE NIAGARA)
キャラクターとはいえ、演じている以上、半分は僕自身みたいなもの
―― ファン待望の劇場版が完成しましたが、今の心境はいかがですか?
1ファンとしての気持ちがどこかにありつつも、やっぱり感慨深いものはありますよね。ここまで来た、映画化への展開としては比較的早かったパターンだとは思いますが、僕がユーリ役をやらせていただいて3年弱ぐらい。1つのゲームのキャラクターを長い間演じ続けることは少々めずらしいことなので、ここまでの長い付き合いになるとは、本当に思ってもいなかったですしね。
―― これほど長い間同じキャラクターを演じると、ご自身と同化するものでしょうか?
それはないです(笑)。ただ、キャラクターとはいえ、僕が演じている以上、半分は僕自身みたいなところはあると思いますね。性格などの基本的な設定はありますが、そこに感情を入れて演技しているのは僕そのもの。どこかしらに僕自身のテイストは出てくる。ユーリが怒っているシーンでは、怒って声を出しているのは僕ですからね。似ているといえば、似ているとは思います。
―― 今回の劇場版の中で特に印象に残ったシーンはありましたか?
クライマックスに向けてのナイレン隊長とのシーンでしょうね。ある意味、継承のシーンだったと思います。というのは、ユーリはゲームではナイレン隊長のような大人になっている。映画版は過去のストーリーですが、ナイレン隊長とユーリがすごく似ていることがわかると思います。ユーリは普段はダラッとしている男ですが(笑)、やがてナイレン隊長のような大人になります。
ゲームと劇場版で異なるユーリのキャラクター設定に注目!
―― 劇場版の完成を迎えて、改めてこのシリーズの魅力は何でしょうか?
ゲームを含めたシリーズを通して、物語としては王道だと僕は思っています。そういう意味では、子どもから大人まで万人が楽しめる作りになっていて、その上で魅力的なストーリー、キャラクターたちが、バランスよくうまくまとまっているなと思います。基本的にファンタジーですが、人間ドラマがしっかり描かれているので、決して子どもだけのための世界ではないですよね。
――
ユーリについては、彼をどんな男だと思って演じているのですか?
まずゲームのユーリは年をとっているので、もはや大人の男なわけですよね。ある程度、性格や人格などが形成されている。また、自分の正義を貫くための覚悟を決めていて、手を汚すこともいとわないほど。また、行動をともにしている仲間たちの成長をうながすこともある。一歩踏み込むために、背中をポンと押してあげるような。そういう役回りでしたね。大人の男ですね。
―― 今回の劇場版ではユーリの若いころが観られるので、ファンは必見ですね。
今回の劇場版では、なぜ今のユーリがあるのか、その成長が描かれていきます。根本的なところは同じだけど、青臭い一面も描かれる。まだ大人になりきれず、自分をコントロールしきっていない。感情のおもむくまま、思い通りにいかないことへの苛立ちなども明かされます。人間的に未熟で、目的達成のための手段がわかっていないのでしょうね。また、フレンの成長もテーマです。
同じ演技をするという作業でも、声優には特殊な技術が必要
―― ところで、感情的なシーンでは、個人的な経験から気持ちを作るのでしょうか?
それはないです(笑)。人によっては自分の経験を思い出して気持ちを作る人もいるとは思いますが、僕は台本に忠実といいますか(笑)。ただ、喜怒哀楽の感情の表現としては、僕そのものになってしまうとは思いますが、泣くシーンで実際に涙を流すことはないので、悲しい出来事を思い出して演じることはないですね。僕たちは音だけで表現しないといけない。逆に冷静ですよ。
――
なるほど! 実際に泣いてしまっては、かえって障害が多そうですね。
ええ。100パーセント感情移入してしまうと、本当に泣いてしまうわけですよね。そうなると、鼻水をすすったりして、まったくアフレコにならない(笑)。鼻水が出るのはリアルだけど、そういう描写が映像の中になければ、まずいですよね。アニメーションとして不成立になってしまう可能性が出てくる。基本的には俳優の演技なのですが、その意味で特殊な職業だと思いますね。
―― 実写の俳優に比べて、アドリブなどは圧倒的に少なそうですね。
演技をするという根本的な部分は同じですが、声優には特殊な技術が要ります。画に声を当てるために、自分の間じゃない感覚でセリフを言う必要があります。普通のドラマの現場ではないことでしょうからね。たとえば、じたばたせずに足も動かさずに走ることって、普通のドラマの現場でないですよね。アニメーションの世界では、息、その音だけで表現するので、特殊ですよね。
男性から見てもカッコいいと思うユーリという男の魅力とは?
―― ところで、もしユーリが実在したら、友だちにしたいですか?
僕よりも若い設定ですが、頼りがいのある男ですよね。任しておけば大丈夫な感じがするし、優しいけど、でも、甘やかしてはくれなそうですが(笑)。身内や近所にいてほしいとは思います。男から見てカッコいいと思うので、本当にいたらいいなと思いますよね。ストレートだし、じつは熱いし。皮肉を言いますが、人を認めることもできる。そうあれたらいいなあと思いますね(笑)。
――
確かに、ユーリは男性から見ても、憧れてしまう要素は多いですね。
自分の行動に対して1本筋が通っていて、なかなか曲げない。ダークヒーロー的な要素もあって、ゲームでは暗殺者みたいなこともする(笑)。いまの時代、筋を通すことは大変なことで、実際にできる人は少ないように思います。見ていて単純に気持ちがいいと思う。そういうところも、魅力の1つかなと思いますけどね。ほとんどブレないし、覚悟を決めているところがカッコいい。
―― そんなキャラクターのユーリは、演じていて楽しそうですね。
楽ですね(笑)。自分がイメージしていたユーリ像とマッチしていたので、最初から自由に演じさせていただいていたので。本来は演技に修正が入ったりするものですが、ユーリに関しては最初のままでした。僕のイメージと制作サイドのイメージに差がなかったわけですよね。アイデアを出したというよりは、合致した感じなので、全然無理をしていない。そういう意味で楽でした。
何事にも意味を持たせて、時間を無駄にしないように邁進!
――
最後に、この仕事で、やりがいを感じる瞬間はどんな時でしょうか?
仕事をしている最中よりも、終わった後でしょうかね。お手紙をいただいたりして、反応が返ってきてからですね。感動したとか考えかたが変わったとか、声優を目指そうと思いますなど(笑)、いろいろな反応がありますが、人の人生に少なからず影響を与えたりしているのだなあと。大変な責任を感じますが、観てくれたかたがたがそこまで思ってくれるのは、本当にうれしいですね。
―― 現時点で決まっている、今後の目標や夢、目指したいところなどはありますか?
特にないですね(笑)。日々を無駄にしないように生きていきたいです。今はゴルフがやりたいですかね(笑)。去年ぐらいから始めて、全然行けてない。とにかく(笑)、時間を無駄にせず、何事にも意味を持たせて、惰性じゃなく、しっかりとやっていきたいと思います。
プロフィール
鳥海浩輔(ユーリ・ローウェル 役)
1973年5月16日生。神奈川県出身。代々木アニメーション学院声優タレント科、日本ナレーション演技研究所卒業。テレビアニメの主な代表作に「NARUTO -ナルト-」(犬塚キバ 役)、「BLEACH」(ザエルアポロ・グランツ 役)、「DiGiCharat」(リク 役)、「ロミオ×ジュリエット」(キュリオ 役)、「DARKER THAN BLACK」(河野豊 役)、「鋼殻のレギオス」(ディン・ディー 役)、「人探偵脳噛ネウロ」(石垣筍 役)、「パンプキンシザーズ」(オレルド 役)、「Pandora Hearts」(ギルバート 役)、また、「テイルズ オブ ヴェスペリア」以外のゲームでは、「ソウルキャリバー」シリーズ (ユンスン 役)などがある。趣味は、歌、音楽、料理、洋服など。
バックナンバー
- 2009.11.19 『テイルズ オブ ヴェスペリア ~The First Strike~』鳥海浩輔さん単独インタビュー
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