シリーズ最新作が絶賛放送中の刑事ドラマ「相棒」。この国民的人気作で、特命係・杉下右京を陰から支え続けてきたのが、鑑識の米沢守だ。その彼にスポットを当てたスピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』が発売に。六角精児に「相棒」、そして米沢守の魅力を聞いた。

■取材・構成・撮影/床板京平(OFFICE NIAGARA)

“鑑識さん”と呼ばれ、シリーズの人気を実感!

―― 『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』は、劇場公開時の評判がとても良かったですね。

そうですね。でも、僕の身近な人間には「お前があれほどたくさん出ているのはおかしいぞ」と言われましたね(笑)。主役なのにね(笑)。米沢守の事件簿を観て、世の中本当にいろんなジャンルの映画があるんだなあと。そういうことを言ってた人がいました。主役といっても、まさかあれだけ活躍することはないだろうという先入観で映画を観て、びっくりされたのかなと思いますけどね(笑)。

―― 「相棒」ファンにとっては、これ以上ないほどうれしいスピンオフ企画だったと思います。

うれしいですよね。それこそ、単純に映画として面白かった、楽しめたという感想が多かったですからね。スピンオフの企画が持ち上がる以前から、街を歩いていたりして、“鑑識さん”と呼ばれる機会が増えていたので、なんとなく人気を実感していました。僕の名前は六角なのにと思いながらも(笑)、これだけ長い間やっていると、その効果は絶大なんだなと。

―― 人気を考えれば、もう少し早い段階でスピンオフがあってもおかしくはなかったですよね。

「相棒」は長期間放送されているので、主人公の周囲にいるキャラクターたちの何人かにスポットが当たってきていますし、枝葉にわたってしっかりと作り込まれているドラマなので、役柄とストーリーが一体化して、どんどん力強い作品になってきていると思います。観ている人は、そういうことを感じてくれているのかなと。質を落とさず継続すれば、お客さんは自然に付いてくるものです。

「相棒」はドラマのあるべき姿をクリアしている

―― 確かに、満を持して、待望のスピンオフ登場で、作品全体に安定感が漂っていましたよね。

ええ。こういう恵まれた状況でスピンオフが生まれてくること自体は、僕が主役じゃなかったとしても、自然の流れだったと思いますね。だからといって、今度は本筋のテレビドラマに戻った時に、スピンオフの主役がいつもよりも重要な役割を担うことをせずに、淡々といつもの仕事をこなして、ストーリーが進む。そこが「相棒」の深さであり、面白さだと僕は思いますけどね。

―― そうすると、現在放送中のシーズン8では、米沢君は大活躍をしないのでしょうか(笑)?

(笑)。しっかりと地に足を付けて、ドラマのためには何が一番重要なのかを皆で考えながら、そのことを自覚しながら撮っている姿勢が、「相棒」が長い間愛されている理由だと思いますし、ドラマのあるべき姿なのかもしれませんね。でなければ、スピンオフの映画を無理矢理作ったとしても、あれだけたくさんの人たちが観てくれて、高評価を得ることはなかったと思いますね。

―― 単なるお祭り騒ぎの企画ではなく、本家に負けない厚みのあるストーリーだと思いました。

う~ん。お祭りはお祭りで僕は全然ありだとは思いますけど、スピンアウトした米沢君がどんな私生活を送っているのか、どんな事件に遭遇したのかを考えた時に、そもそもあまりお祭りにはなりえないでしょうね(笑)。それをお祭り騒ぎだけで片付けてしまうと、「相棒」本来の良さがなくなってしまいますから。もともと、原作本の時点でシリアスな世界観がありましたしね。

僕の中のわりと大きなかけらが米沢のキャラクターです

―― 今回明かされる、米沢君の私生活の描写は、六角さんのイメージ通りでしたでしょうか?

米沢君の私生活はイメージ通りというわけではなかったと思いますが(笑)、あのようなスタイルもありかなと思いました。米沢君の自宅を作る際に、比較的置けるモノがたくさんあります。職場と同じパソコン、ソフトもあるでしょうし、マンガ、ギター、いろいろなモノがね。オタク趣味を感じさせるものは、何でも置いておける。そういうニュアンスの部屋は作りやすかったかもしれませんね。

―― 冷蔵庫の古ピザを捨てるシーン1つとっても、米沢君の人間性に厚みが出ていましたよね。

そうですね。そういった意味では、設定上の間違いは1点もなかったように思いますね。米沢という人間は、あのような部屋に住んでいると思いますし、僕自身、演じていても違和感を感じませんでしたしね。原作者のハセベバクシンオーさんは米沢という人間の一本筋を通していますから、設定にブレがないのでしょうね。でも、これほどの人気になるとは思っていなかったでしょうね。

―― 路上での弾き語りのシーンなどは、六角さんのアイデアが採用されたのかと思いましたが。

バクシンオーさんがどこで聞いたのか知りませんが、もともと弾き語りを街頭でやっている設定がありましたし、ドラマでもギター小僧だったというセリフがありました。そもそも米沢君は、僕をベースに作り上げていったところがありますので、自然に受け入れられる要素が多い。僕が生きていて、その中のかけらといいますか、僕の中のわりと大きな一部分が米沢のキャラクターです。

長い間続けていくと、より六角精児に近づいていくかもしれない

―― ところで、これまで長い間米沢君を演じてきて、何か思うこと、感じることはありますか?

それはいろいろありますね。米沢君が所属している鑑識班というのは、もともと刑事ドラマの中でも特殊な役回りですよね。ドラマと現実をつないでいる側面がありますので、そこに対するリアリティーは演じている本人も感じています。僕自身納得しながら、演じているわけです。本庁の刑事が所轄に何の断わりもなくやって来る理不尽さなど、実際に米沢君がいたら嫌でしょうし。

―― 演技とはいえ、そういう理不尽な出来事には怒りや不快感を覚えたりするのでしょうか?

ええ。それはありますよ、筋が通らない社会悪や必要悪をテーマにしている側面が、「相棒」には多いですからね。ただ、そういうシチュエーションになった場合でも、鑑識班の米沢君は個人的な怒りなどをある程度持ちながらも、どこかで冷静に事態を判断しないといけない。自分に近しいキャラクターですので、それほど難しいことではないのですが(笑)。

―― 最後に、現在シーズン8を迎えましたが、今後の米沢君はどうなっていくと思いますか?

出番が増える、減るではなく、シーズン8でも同じでしょうね(笑)。でも、だからこそ長い間続けていくと、より六角精児に近づいていくかもしれない。毒のある部分が見え始めたりね(笑)。スピンオフの撮影が終わった後に、次のスピンオフに橋渡しができればいいなと思った瞬間がありましたが、もしそうなった時、次の主役がどんな楽しいドラマを見せてくるのか、僕自身、楽しみにしています。

 

プロフィール

六角精児(米沢 守 役)

1962年6月24日生。兵庫県出身。神奈川県育ち。劇作家・横内謙介が主宰する劇団「善人会議(現・扉座)」の創立メンバーとして数々の劇団公演に参加する一方で、ケラリーノ・サンドロヴィッチや生瀬勝久、蓬萊竜太、倉持裕など注目の作家・演出家の外部公演にも出演を重ねる。1990年代以降は、テレビドラマ、映画、TVCMなどの世界に活動のフィールドを広げ、水谷豊、寺脇康文の名コンビによるテレビドラマ「相棒」シリーズで、鑑識の米沢守役を好演。一躍お茶の間の人気者に。以来、現在放送中のシーズン8に至るまで、理論派の名バイプレイヤーとして、ドラマを支え続けている。

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