
国内外で高い評価を得ている園子温監督の最新作『ちゃんと伝える』で、EXILEのパフォーマーとして活躍中のAKIRAが主演した。映画初主演で、余命わずかな主人公を演じることになったAKIRAが、超人気グループのブランドをかなぐり捨て、本気で俳優業にチャレンジした意欲作。新境地を開拓したAKIRAがインタビューに応じた。
(取材・構成・撮影/床板京平)
普段の僕のビジュアルなんてどうでもよかった(笑)
―― 映画で初主演ということを含めて、プレッシャーなどはありましたか?
初主演ということに対してのプレッシャーや、ヘンな気負いはなかったのですが、北史郎の人生を演じる責任を感じました。台本を初めて読んだ時、感動してバケツ一杯分ほど泣いて(笑)。でも、その後、この役の重さを改めて感じて、世の中の人に少しでも園監督やキャスト、スタッフのみなさんの、この作品に賭ける想いやメッセージを伝えられるよう、作品の中で史郎として一生懸命に生き抜きました。
―― この作品で演じられたのは余命間もない、サラリーマンの若者ですね。
最初は北史郎という、この青年の役を、自分ができるのかなと本当に悩みました。現実にガンで闘病しているかたや、そのご家族がいるわけですから、それを実際に経験していない自分が、自分なりの解釈や感覚で演じていいのだろうかと。罪悪感すら感じるほど、自分を追いつめてしまいました。そういうかたたちに失礼のないよう、とにかく役に向き合おうと心に決めて臨みました。
――
EXILEのパフォーマー、AKIRAとはまったく違う外見も話題ですね(笑)
ヒゲを切る、髪を切るということ、ビジュアルなんてどうでもよかったですね(笑)。映画の中で北史郎として一生懸命に演じて、生きて、観たかたがたが今後の人生で何かのきっかけにしていただけたらうれしいですね。
映画ではEXILEというブランドを捨てていました――
―― ダンスと演技の違いは、どこだと思いますか?
苦しい部分が違いました。演じる苦しさのことですね。この苦しさがたまらない(笑)。自分ではない人間になるので、それってメンタル的にもフィジカル的にも苦しかった。作品の中で試行錯誤を繰り返して、共演者のかたがたとのキャッチボールで生まれていくという作業は、自分ではない自分を進化させていくこと。とても苦しい作業でしたが、終わった後には快感が残りました。快感が今度は寂しさに変わって。これが楽しかったです。
―― ダンサーではない自分がスクリーンに――作品の感想はいかがでした?
いまこうして、北史郎君が抜けた状態でいると、すごい照れ臭く感じますが(笑)、撮影中は北史郎君に染まって、全身全霊で自分の魂を費やしました。いい意味でEXILEではない僕のスタイルがあると思いましたし、本格的な志向で映画の畑に染まることができました。違和感はなかったですし、何より園監督がすごいなと改めて思いました(笑)
――
その園子温監督からは、演じる上でどんなリクエストがありましたか?
園監督からは、演技指導がまったくなかったですね。本当に僕自身に任せてくださって、現場で細かい理屈や理論などのアドバイスがくるということではなく、感じたまま、直感を活かしたキャッチボールが大きかったと思います。唯一、園監督が言われていたことと言えば、「爆発力のある秘めた想いを、思い切り解放してくれ!」ということでした。北史郎君は素朴ですが、魂は熱い。これは静かなシーンでも必要になってくる感情でした。
一度染まったら染まりっぱなしのほうが楽です(笑)
―― シリアスな作風ですが、役へのアプローチも含め撮影は大変でしたか?
撮影スケジュールはタイトでしたね。撮影後にみなさんとご飯を食べに行ったりして、コミュニケーションを取ったりして、寝る時間も短かったし、自分に戻る時間がなかったような気がしますね。もともと、そんなに器用じゃないので、一度染まったら、染まりっぱなしのほうが楽でしたが(笑)、すべてが僕じゃない日々。胃が痛かったです。自然と4キロも落ちましたし、自然と史郎になっていた感じですね。リアリティーを感じました。
―― 本作のテーマでもある、人間関係を築く上で大切にしていることとは?
とにかく思いやりですね。いつもEXILEの14人のメンバーと一緒にいますが、その時も絶対に思いやりをもって行動し合っています。EXILE自体が輝けば、結果メンバーみんなが輝くという意味で、自分がもし影になっても、誰か1人が輝けばグループ全体が輝くじゃないかって考えています。その考え方が結局、映画の現場でも活かされたと思いますね。自分が主役なので前に出る。そういうことはまったくなかったですね。
―― ご自身が人と仲良くなっていくきっかけは、どういう感じでしょうか?
僕は心を開くまでに時間がかかるタイプですね(笑)。人見知り(笑)。今回の作品でいうと、園監督や奥田瑛二さんたちと不思議と意気投合してしまい、会話をしなくても、空気感でわかりあえている部分があったと僕は思っています。僕は音楽業界で、みなさんは映画業界ですが、一緒にいて、どこか落ち着いたり、共感できる。言葉を交わさなくてもわかりあえている気がしましたね。『山形スクリーム』の竹中直人監督も同じでしたね。
普段の僕は、ちゃんと伝えきれていないかもしれない
――
史郎ではなくご自身から見て陽子(伊藤歩)という女性はどうですか?
あんなにいい女性が本当にいたらいいですよね(笑)。僕も将来は彼女みたいな女性と結婚したいですね。素直だし、彼女みたいな反応が普通だと思いました。愛嬌があって、優しさがある女性が身近にいたら、すごい素敵だなって思いましたね。僕は遠慮しがちなので、はっきりしている女の子が好きですね(笑)。普段の僕は、ちゃんと伝えきれていないと思います。彼女にカマをかけるシーンがありますが、演技とはいえ辛かったですし。
―― そのシーンで、心苦しくなってしまう気持ちは、よくわかります(笑)
参道を歩いているシーンですね。もし自分がガンでいなくなったらと言う。大事な人だからこそわかりあいたいし、でも、言えない。なのに、自分が安心感がほしいから、その確信を得るために、なんとなくふってしまう。彼女の答えをわざと聞き出したいわけじゃないですか。で、彼女はズバッと言いますよね。史郎君としては、辛かったと思いますね(笑)。究極の段階にきているわけなので、自分ならどうしようかと思っちゃいますよね。
――
最後に映画を楽しみにしているファンへ、メッセージをお願いします!
受け手のかたがたが、それぞれに感じていただくシーンがすべて見どころですので、幅広く、いろいろな世代のかたに、この映画が心に刺さっていただけるとは思います。僕自身も“ちゃんと伝える”ということは何か?
ということを考えさせられました。周りにある幸せや通り過ぎていく不幸せ、誰しもが受け止められる問題がテーマとなっておりますので、みなさんの人生の何かきっかけにしてほしいですし、何でもないような日常生活のなかで、点と点が線になって、メッセージになることを知ってもらえたらうれしいです。
プロフィール
AKIRA(北 史郎 役)
1981年生。静岡県出身。16歳からダンスを始め、静岡を中心に日本全国のダンスクラブイベントで活動。多数のアーティストのバックダンサーやPVに出演して注目を集め、2004年に現・EXILEメンバーのMAKIDAI・USAとともに、「RATHER UNIQUE」のパフォーマーとしてデビュー。2006年には俳優としての活動を始め、同年6月、パフォーマーとしてEXILEに加入。2009年は本作のほか、竹中直人監督作品『山形スクリーム』でも好演を披露した。
バックナンバー
- 2009.9.9 『ちゃんと伝える』AKIRA(EXILE)さんインタビュー
- 2009.9.1 DVD『とっておき寄席!』柳家喬太郎師匠インタビュー
- 2009.8.24 『ノーボーイズ,ノークライ』妻夫木聡、ハ・ジョンウインタビュー
- 2009.8.17 『スラッカーズ』柄本時生さん単独インタビュー
- 2009.8.14 雑誌HiVi編集長 泉哲也さんに聞く ~素晴らしきブルーレイの世界~
- 2009.8.5 『蟹工船』SABU監督単独インタビュー
- 2009.7.28 DVD『とっておき寄席!』三遊亭歌武蔵師匠インタビュー
- 2009.7.23 「海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行 最終章」坂口憲二さん単独インタビュー
- 2009.7.23 『ガマの油』『キミに歌ったラブソング』二階堂ふみさん単独インタビュー
- 2009.7.17 推薦DVD『奄美 ティダぬ島 唄ぬ島』発売記念 中孝介さんインタビュー
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