
俳優・坂口憲二がライフワークとしてきた「海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行」が、いよいよ“最終章”を迎える。サーフィンと出会い、その魅力に惹かれ、今度は坂口自身がサーフィンと海から見た日本の姿を伝えてきた渾身作。フィナーレを前に、シリーズとともに過ごした歳月を振り返ってもらった。(取材・構成・撮影/床板京平)
日本を知らなかった経験が今回の企画の始まりでした
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いよいよ最終章の発売になるわけですが、いまの心境はいかがですか?
正直、ちょっと寂しいですね(笑)。でも、番組は終わりますが、僕の旅は続いていきます。またの機会にDVD化などを実現させたいと思っていますが、日本という国を約3年間かけて回ったことの区切りをつけたかったので、いいタイミングだと思います。いろいろな物の見えかたが変わりましたし、さまざまな知識や経験が増えました。それを踏まえて今度は再び海外へ足を伸ばすことで、また新しい日本の魅力が見えるのかなと思います。
―― もともと、海外などをたくさん先に回られていて、経験豊富ですよね?
ええ。海外の体験があって日本へ目を向けたのですが、海外にいたときにいかに自分が日本を知らなかったのか驚いた経験が、今回の企画の発端でした。たとえば、いままで海は海でしかなかったのに、四国の海と小笠原の海、同じ海だけれど、まったく違うことに気づきました。色や匂い、風、人々、文化など、いろいろな要素が違うんです。波も同じこと。海を見続けてきたからこそわかる、その違いがわかってよかったと思いました(笑)
―― サーファーである坂口さんならではの視点というものがありそうです。
サーファーとそうじゃない人の視覚は全然違うと思います。サーファーじゃない人たちは海を海としてしかとらえていないけれど、サーファーはまず波を見て、それから漁師さんたちを見て、植物や鳥、いろいろな要素から成り立っている自然を観察する、ということをするんです。すべてのサーファーがそういう考え方や視点を持っていると思いますし、僕自身がそういう考え方や視点を持てるようになるには、かなりの時間がかかりました。
――
サーフィンやサーファーに対するイメージが変わるような解説ですね。
そうなんですよ。サーフィンってサーフボードに乗っているだけのイメージがありますが、じつはそれだけじゃない。奥が深く、すごい楽しめるもの。そこに気が向くと、サーファーがある種の人種に見えるはず(笑)。サーファーって強烈じゃないですか。日焼けして真っ黒で、塩っぽい感じがするけれど、眼差しは優しい。たとえば、相手と話していて趣味まではわからないけれど、サーファーの場合はすぐにわかる。そんな人たちですね。
みんな同じ目線で物を見る――これがサーフィンの力
―― サーファー同士の感覚やフィーリングというのは世界共通と聞きます。
そうですね。僕が以前モロッコに行ったとき、海にはサーファーが1人もいなかったんです。この国にはサーフィンの文化がないのかな? って思っていたのですが、遠くのほうから真っ黒に日焼けした金髪の男性が歩いて来た(笑)。よく見ると、サーフィンのTシャツも着ている。まさかと思って話しかけたら、サーファーだっていうんです。たまたま日本のサーフィンの雑誌を持っていて、その彼に見せて打ち解けたことがありましたね。
―― その後、その人と一緒にサーフィンをすることになったのでしょうか?
ある旅番組でモロッコに行ったので、僕は板を持っていなかったんです。そうしたら、その彼が明日の朝7時にビーチに来いと。翌朝、言われたとおりに出かけて行ったら、10年以上も前のボロボロの板を持ってきてくれたんです。サーフィンの文化がない国だと思っていたので、すごい感激しました。彼は、今日は誰もいない! 貸し切りだって言ってましたが、たぶんいつも貸し切り(笑)。2人で2時間ぐらい、サーフィンを楽しみました。
―― サーファー同士ならではといいますか、うらやましい出会いですよね!
海から出て2人で波を眺めていたときに、その彼が、お前は地平線の向こうの国から来たんだろ?
って言うんです。でも、俺はそっちに行くことができないと。でも、お前が来てくれたおかげで、日本や日本人のことが少しでもわかったと。まったく言葉が通じない国で、そんなことを言われて、すごいなと(笑)。そういう意味で先ほどサーファーのことを人種と言ったんです。言葉は要らない。サーフボードさえあればいいと思いました。
―― そんな素晴らしい出会いというのは、日本でもあるもの何でしょうか?
今回のDVDで思ったのは、いまの話って日本でも同じことだということです。普通に暮らしていれば、世代が異なる人同士の場合、同じスポーツ、同じ趣味で、サーフィンほど盛り上がることはないと思います。同い年、同世代ならありますよね。今回の旅では、それこそ上は60代、70代まで、下は小学生の子どもまで。2~3日間、旅をともにしましたが、みんな同じ笑顔になっていた。同じ目線で物を見ている。サーフィンの力だと思います。
海は生きていてリアルを感じることができる場所です
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波に乗っている瞬間だけがサーフィンという感じではなさそうですね?
サーフィンという目的が同じだけで、世代が違う人たちと子どもみたいにはしゃぐことができる。こういうことって陸(おか)ではないことだと思うんです。まったく気を使わないし、みんなありのままで、熱く語り合います。語り合うことも、サーフィンの魅力ですよね。東京に住んでいたら湘南まで車で1時間ほどかかりますが、車内でどんな音楽を聴くかとか、その日の波を予想するとか、そこまで含めてサーフィンだと思うんですよね。
―― 波を追い続けていくと、波に対する感覚も変わっていきそうですよね!
波は旅をしてくるわけですよ。はるか沖の彼方から風に乗ってうねりとなって、それが日本という地形にぶつかって違う姿となって現われる。それが一瞬にして消えていく。それを僕らが追いかけ続けているだけの話です。同じ波って本当に2つとないんです。そう考えると、本当にロマンチックですよね。たとえば、四国の海部の波は、地形の関係もあって、そこにしかない波があります。東京にいたら感じることができない感覚があります。
―― また、サーフィンをしていて改めて気がついたことなどはありますか?
自然の偉大さや怖さを知ると、人間が小さい存在に思えてきます。だからこそ、人に優しくなれるような気がしますね。自然がフィールドということが、サーフィンでは大事なんです。こんなハイテクの時代に、もっともアナログなことですよ(笑)。板1枚で波に乗っていくわけですからね(笑)。人間は逆を求めたいのかもしれませんね。飛行機ではなく、船で旅をしたい感覚とか、サーフィンでしか味わえない満足感が絶対にあるんです。
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海はウソをつけない場所といいますが、確かに満足感は大きそうです!
そうですね。いくらいいサーフボードを持っていようが、陸(おか)で有名人であろうが、僕らは波に乗れないと意味がない。サーフィンをし続けるしかないわけです。陸(おか)はウソも通用してしまう世界で、ちょっと有名だったり、お金があるだけで背伸びができますが、そんな気持ちで海に行ったところで通用しない。僕は東京育ちのサーファーですが、おかげでブレずに生きていると思います。海は、リアルを感じることができる場所ですね。
日本に生まれた意味をもう一度問い直してほしい――
――
ところで、坂口さんにとってサーフィンは、趣味ですか、仕事ですか?
僕はプロサーファーじゃないので僕にできることは決まっているわけですが、この企画は真面目に立派な仕事として成立していると思います(笑)。僕は自信をもってやっていますし、観ているかたたちに失礼がないように敬意も払っています。いま、俳優業を頑張ることって僕には大切なことかもしれないですが、人生は1回しかないから、30代で体が動くうちに波に乗って、いろいろな国へ旅をして、いろいろな人に会いたいと思うんです。
―― さまざまな経験を積まれることで俳優業に戻せることがありそうです!
ええ。俳優業って練習して結果がすぐ出るような仕事じゃないので、日常をいかに研究するかだと思うんです。海外に行くと、俺は波乗りが仕事だ! みたいな強烈なオヤジがいますが(笑)、仕事をしないで波乗りを30年やり続けているオヤジに会えることもサーフィンの魅力ですし、自分の中の引き出しも増えていくと思います。人と接し、自然の中に身を置くことで、少しずつ引き出しを増やして、仕事に反映していきたいと思いますね。
―― そんな出会いや発見や情熱などが、このシリーズにはありましたよね!
限られた条件のなかで、お金を払って動いてくれるわけじゃない大自然を相手にカメラを回している――これこそが本当のドキュメンタリーだと思います。波がなければ波がないと言うしかないし、出されたご飯が美味しくなかったら美味しくないって言う(笑)。それをカッコつけずに、伝えられるかどうかが大切だと思いますね。今後も大人数が観てくれなくてもいいから、観てくれた人たちに確実に届く、響く作品を作り続けたいですね。
―― 最後に一言、坂口さんからファンに、メッセージをお願いいたします!
日本はみんなが感じていたり、思っている以上に広いです。時代的に海外志向なところはあるけれど、本当にいいもの、いい景色、美味しい食べ物、素晴らしい出会いは、海外じゃなくてもあります。もっと身近なところにね。そのことに気がついてと、偉そうなことまでは言いませんが、ちょっとだけ感じてほしい。そうすることで物の見えかたも変わってくるし、もう一度なぜ自分が日本に生まれたのか、その意味を問い直せると思います。
Tシャツ \7,350
べルト \15,750
ブーツ \36,540
VICTIM TOKYO 東京都渋谷区神宮前4-25-6 ハナエビル2F 03-5770-4823
デニムパンツ \24,150 スペルバウンド
DMG+S 東京都渋谷区神宮前2-27-6 リオ神宮前ビル 1F 03-5786-2251
スタイリスト/石橋修一、ヘアメイク/北 清輔
プロフィール
坂口憲二(さかぐちけんじ)
1975年11月8日生。東京都出身。東海大学のハワイ校を卒業後、「MEN'S CLUB」でモデルとしてデビュー。2000年、連続テレビドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で大ブレイク。以降は、『機関車先生』(04)、『スマイル
聖夜の奇跡』(07)、「医龍 ~Team Medical Dragon~」(06)、「医龍2 ~Team Medical Dragon~」(07)、「本日も晴れ。異常なし
-南の島 駐在所物語-」(09)など、映画、テレビドラマを問わず、人気俳優として活躍中。
バックナンバー
- 2009.7.23 「海から見た、ニッポン 坂口憲二の日本列島サーフィン紀行 最終章」坂口憲二さん単独インタビュー
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