
フォレストプラス落語特集ページでもお馴染みの落語家・林家しん平師匠。特撮映画や怪獣に造詣が深く、自主製作映画『ガメラ4真実』、昨年公開の『深海獣レイゴー』とオリジナルの怪獣映画を撮影。そしてこの度、新作の『深海獣雷牙』が完成。6/27(土)池袋・新文芸座での先行上映を皮切りに日本上陸が予定されている本作。衰退する怪獣映画、暴走するアニメに一石を投じるしん平監督に、関係者・マスコミを集めて開かれたテスト上映直後に直撃してきました!!(取材・構成/高山リョウ)
「僕の映画はくらべられないでしょう?」
面白かったでしょ!?
――爆発がとにかく凄かったです!
そりゃそうですよ~、消防署が見に来たくらいですからね! 消防車がスタンバって、消防員の人が何人もいて、無線連絡で「今スイッチ入れます」「ハイ終わりました」って具合に報告しないとやらせてくれないわけ。アレ、屋外でやったんですよ。
――ちなみにどちらで?
熱海。熱海の花火を打ち上げる場所で、すんごい広い駐車場なんですよ。そこに機材から何から全部入れて、ドッカンドッカンやったから、近くに熱海ホテルがあったんですけど、皆驚いてたでしょうね。
――(笑)
でもあの爆発って、スローかけてるんで凄いけども、本物は5秒もないんですよ。現場では。バババババン!って終わっちゃう。映画だとスーパースローにしてるから、凄いことになってますけどね。
――火薬の量、通常の怪獣映画の5割増しくらいの感じがしました。
通常の怪獣映画なんか相手にしてませんもん(笑)。
――なるほど(笑)。
悪いけど(笑)。
――斜陽になっていった怪獣映画。しん平監督から見て、何が足りなかったですか?
あー、あのねえ、僕が子供だった頃、怪獣映画って確立したジャンルだったんですよ。怪獣映画と、若大将とかクレイジーキャッツとかのコメディ、それから巨匠が撮る純文学的作品。そういう3本立てが普通だったんです。
でも今はアニメが特撮よりすごいことやってるでしょ? 爆発にしたって本物の火ではないけど、アニメにさらにCGが入ってきて、どっちが何だかわかんないじゃないですか?
でも全部絵じゃないですか? だけど今の子たちって、絵で慣れてるから、爆発しても着ぐるみの怪獣が出てきても、「アニメの方がすげーよ」って上から目線があるわけですよ。
でも僕はアニメよりも怪獣で育った人間なので、“じゃあ怪獣の中にアニメの要素入れてやろうじゃないか”と。それは別に実写にアニメを合成するとかじゃなくて、アニメの楽しい部分? たとえばカワいい女の子が出てくる、戦ってる人たちが意外に冗談言い合ったりしてる。アニメの人たち、そうじゃないですか? じゃ、そういう所を映画にどんどんフィーチャーさせてやろうと。 だからアニメと特撮の垣根を取ろうっていうんじゃなくて、バランスを取ろうとしたんですね。通常の怪獣映画ってバランスを取ってない。怪獣映画の世界を守ってる。だから客も増えなきゃ、マニアだけが酷評していくっていう。
――(笑)
あの作品にくらべてどうだとかね。僕の映画はくらべられないでしょう?
「浅草、大好きな街ですよね」
――女の子の話が出ましたが、メインキャストの三姉妹役(折山みゆ、浦田麻緒、江野沢愛美)。三女の江野沢さん、特に光ってましたね。
カワいいでしょう? 舌ったらずな。撮影当時小学生なんですよ、あの子。
――え!?
「ピチレモン」ってティーン雑誌の専属モデルなの。小学生で167センチくらいあるのかな? すんごいスレンダーで背が高くてカワいくて。
――舌ったらずも含めて、何か自分のキャラを持ってますよね、すでに。
ちょっとたまらないでしょう、男の子には? だから男の子が見たいシーンを盛り込んでるんですよ! たとえば階段を上がっていくミニスカート? 駅でみんな絶対見たいくせに、チラ見はするけどジーッとは見られないでしょう? ましてや写メでは撮れない(笑)。
――階段を上がる3人のミニスカ、かなりギリギリのアングルでしたよね。
真ん中でしゃがませて、チラッとね。そういうのも全部計算して。怪獣ファンというのはヤラしいですからね。
――ヤラしいですか?
そりゃヤラしいですよ! アニメファンだってやらしいじゃないですか? 人気出てるの見たら、ほとんどオッパイがユサユサしてたり、大股のアングルで足上げて戦ったり、ねえ? 実写で人間がやると生々しすぎちゃって、できないじゃないですか?
――たしかに、生身の女の子だからできるエッチな感じが『雷牙』にはありましたね。「パンツ見えるかも」とか「オシッコ」って言わせてみたり。
オシッコね(笑)。怪獣が排泄行為をしたのも、この映画が初めてでしょうね。平成ガメラシリーズでギャオスがペリットって未消化物を吐いたことはありましたけど。
――破壊つくした浅草の街に、最後、犬みたいにマーキングを(笑)。
怪獣だって生物ですから、ナワバリにはニオイをつける。でもオシッコったって、汚くはなかったでしょ? 虹がかかるんだから(笑)。
――怪獣・雷牙が襲来した浅草。やはり思い入れがある街ですか?
うん、大好きな街ですよね。
――黄金のウンコのオブジェが飛ばされました。
みんなウンコ、ウンコって(笑)。 社名にちゃんとピー入れてますからね(笑)。『クローバーフィールド』? そうそう。
――しん平師匠の創作落語『焼肉の天使』を思わせる焼肉屋のシーンもありましたね。
「大福園」ね。行きつけの店で、浅草ビューホテルの対面の細い路地にありますよ。噺家はだいたい、お金ない時はあそこ行きますね。お金なくて豪華な気分になりたい時。あそこね、上カルビとかないんですよ。カルビならカルビ、タン塩ならタン塩、どの肉も1種類。安くてうまい!
――今回、何故浅草を舞台に?
今まで怪獣映画には出て来たこともなかったし。京都は1回出てきましたけど、壊さなかったですからねえ。京都タワーは壊したのかな?ゴジラが。でも、そんなもんでしょう?神社仏閣系は意外に壊さないんですよ、怪獣は。ミニチュア作る時、瓦の枚数すごいでしょ?手間もお金もすごくかかっちゃうんですよ。
――ウワサでは今回の作品、予算2億とか?
ないない(笑)、それくらいかけてるように見えるって話(笑)。でもだから、浅草寺も逆に壊せないシチュエーションを考えちゃえばいいんですよ。そういう逆転の発想で、逆にシナリオが面白くなったり、深さが出たりする。東○ス○イツリーは爆破させてもらいましたけどね(笑)。でもまだ完成前だから怒られないですよ。ハッハッッハッハ!
「これでもかってくらい、やっつけてやる」
――最初にも申し上げましたが、『雷牙』は破壊描写がかなり徹底的なのが印象的でした。
うん、僕の拙い絵コンテを特技監督の國米修市さんがカッコ良く仕上げてくれてねえ。できあがった絵を見た時は正座して叫んじゃうくらいでした。合成、CG…ポスプロにやっぱり時間と手間をかけましたからね。3~4ヶ月くらい?
――ポスプロにはしん平監督立ち合いで? ダメ出しとかも?
ああ、言う言う。見て物足りなかった所はどんどん言いましたよ。爆発だけじゃなくて、たとえば怪獣に血を足してくれとかね。怪獣が戦闘機に機銃で撃たれて、血が出ないのおかしいなってずっと思ってたんで。血がピュッと飛ぶと、やっぱり嫌悪感とか痛みの感情が働くんですよね。ああ弾入ったんだなって。
――見過ごされてきたリアリティを。
あとは、これでもかってくらい、やっつけてやる。やっつける気持ちよさ? 徹底的っていう。それをやるとお客さん、2つにわかれるんですよ。かわいそうって思う人と、もっとやれって思う人。
――怪獣映画の醍醐味。防衛隊の攻撃も凄かったですよね。使用禁止のクラスター爆弾で浅草が焼け野原に(笑)。
うん、東京大空襲を知ってる世代の方には、見たくないって人もいるかもしれないけれど、今は映画で描けるくらい平和な時代ってことですね。怪獣が襲来したらそのグッズを作って商売する、焼け野原になっても江戸っ子だから祭りは中止しない。人間のしたたかさですよね。
クラスター爆弾も自衛隊が使ったら問題だけど、『雷牙』は浅草寺地下に秘密基地がある、台東防衛隊ですからね(笑)。ふだん下駄屋とかやってるオヤジが有事に駆り出されてるだけだから。「使っちゃう?」「いいねー!」ってノリで。
――古今亭志ん五師匠はじめ、お気楽な幹部連が(笑)。柳家さん喬師匠他、噺家の方々もたくさん出ていましたね。
会長(鈴々舎馬風)も出てたでしょう? 噺家は大体皆、声とか性格とか頭の中に入ってるんで、シナリオ書いてると声付きで浮かんでくるんですよ、こいつはこの役、この人はこの役って。
――林家正蔵師匠はタヌキのコスプレでしたが(笑)。
アレはねえ、僕は普通に出そうと思ってたんだけど、「なんか面白く出してよ~」って言うから。あの着ぐるみ、昔、僕が作ってあげたんですよ。小学校で『たぬき』って落語やる時、最後たぬきに変身して、ちっちゃいオ○ン○ンで爆笑とるっていう。着てるの見たら違和感なかったから、アレで出てもらいました(笑)。 噺家が出てくる場面、噺家同士の会話って、そのまま落語になってたでしょ?
――すでに2作映画を作られて、もう3作目にも意欲的なしん平師匠ですが、落語と映画、どちらが大事ですか?
そういう考え方はないです。落語やる時は落語、映画やる時は映画。その時できるものに100%。落語やってる時は映画のことは考えませんしね。寄席は6月トリでしたけど、新しいパワーアップした「動物園」をやりましたからね。「動物園」なんてトリでかける噺じゃないですからね。でも僕が話したらトリネタになる。だってその辺の「動物園」と全く違うもん。
――映画と同じで、“くらべられないもの”を。
映画を撮る時は寄席休みますしね。今回の『雷牙』は不定期の撮影だったから、夜席に出てそのまま朝まで編集やったりでちょっと辛い時もあったけど。50過ぎたら、ちゃんと寝ないといけないな(笑)。 でも映画はまだまだ撮りたいですね。今度は多分…ホラー。人気脚本家でも気付けない、落語家の僕だから気付いたホラー。今まで皆さんが見たことのないホラーですよ。僕がやることは何でもオリジナルなんです!
プロフィール
林家しん平(監督・企画・原作・脚本)
55'年東京都出身。74'年、初代林家三平に入門。常識にとらわれない破天荒な芸風で早くから注目を浴びる。81年二つ目に昇進。映画『セーラー服と機関銃』(81’)出演、ラジオのDJなど落語以外でも広く活躍。90'年真打昇進。プロレスや特撮に造詣が深く、プロレス落語、怪獣落語も発表。01'年、初の自主映画『ゴジラ×デスギラス』。03'年自主映画『駕瞑羅(ガメラ)4真実』を製作。08'年には『深海獣レイゴー』(劇場公開作)を製作。本作『深海獣雷牙』は通算4作目の監督作品となる。
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