『バスケット・ケース』で知られるカルト映画の巨匠フランク・ヘネンロッター監督。今回、前作から16年ぶりとなる新作『バッド・バイオロジー』がついに完成。日本でも6月6日より公開される運びとなった。去る2月に開催されたゆうばり国際ファンタスティック映画祭では熱狂的なファンが殺到し、監督もしっかりと手応えを感じ取っていた。そんなヘネンロッター監督に本作の見どころを聞いてみた。(写真左:フランク・ヘネンロッター監督、写真右:R.A.トーバーン プロデューサー)

日本の観客は私の映画の見方が分かっている

――『バッド・バイオロジー』の日本での反響は、どのように感じました?

とってもいい反応をもらえたので、うれしかったよ。この映画の最初の数分は結構驚かれることが多いんだ。冒頭のセックスシーンで、興奮しすぎた主人公の女性が相手の男性の頭を何度も床に打ちつける場面があり、そこは笑える場面になっているはずなんだけど、予想通りの反応がもらえたんで、日本の観客は私の映画の見方が分かっていると感じることができた。

――日本ならではの反応はありました?

そうだね。後半の方で、男性の体からアソコが勝手に離れてしまう展開があるんだが、その時にその男性がアソコに向かって言い放つセリフにかなり笑ってもらえたのが驚きだったね。

――監督は若いプロデューサーと二人で脚本を書かれていますが、意思疎通の問題はクリアできたのですか?

何度も書き直しをしながら、話し合い、繰り返し修正をしていった。セリフに関しては彼の方が天才的なものを持っているので、そこはお任せだったかな?

――やはり主人公が若者だったことが関係しているのでしょうか?

ハッハハハ。確かに。現場ではスタッフ、キャスト含め私が一番年上だったからね。

肉体の奇形を除けば、彼らは普通の人と何ら変わらない

――スタンリー・キューブリック監督の『アイズ ワイド シャット』やデヴィッド・リーン監督の『インドへの道』など、年齢を重ねた監督は性的な題材を扱う傾向があると思います。ヘネンロッター監督もその域に達したと思ってよいのでしょうか?

ガッハハハハハ!君、正気かい?一体この映画を見て、どうしてそんなこと思えるんだ?でもまあ最大級の賛辞と思って、受け取らせていただくよ。

――男性から見ると出産のメカニズムを備えた女性の体は神秘の一言に尽きます。『バスケット・ケース3』でも、そうしたテーマを取り上げたと感じたのですが、いかがでしょう?

『バスケット・ケース3』は最悪な映画だったよ。全く好きになれない。オリジナルの脚本ではとてもいい場面だったものが、映画会社によって削除されてしまい、予算もなくあきらめざるを得なかった。本当は生命の根源を追求するいい内容だったんだけどね。

――監督の作品は一貫して“奇形”というものを取り上げ来ています。それに対するこだわりというものはあるんでしょうか?

そういうつもりではないんだけど、結局そうなってしまっているよね。殺人鬼や幽霊といったよくあるホラーのキャラは自分にとっては非常に子どもじみて見えるんだ。でも生命の潮流というか、そうしたものには恐怖を覚えることがある。肉体というものは、その中で生命を生み出す訳だが、私の場合、そこに怖さが存在するんだ。だから性的な出来事と体内で起こっていること、そして結果生み出される存在が確定していないことに不安を感じてしまうんだ。でもそれこそが映画的だと思うんだが、どうかね?

――主人公の男女の設定ですが、奇形であるがゆえに精神面が歪んでいくのか、それとも逆なんでしょうか?

彼らの体が奇形ということだから、もちろん問題は抱えている訳だ。でもその問題に彼らはきちんと対処できない。それがストレスとなって映画に描かれるようなことをしてしまうことはあるかと思う。『バスケット・ケース』の主人公ドウェインも同じ境遇だった。肝心なのは、肉体の奇形を除けば、彼らは普通の人と何ら変わらないということだ。

チャーリー、彼女以外の女優は絶対考えられないね

――今回の作品は昔のヘネンロッター監督の作品と、変わらぬ精神に支えられていると思いますが、映画作りの意欲はどこから湧いてくるんでしょう?

よく分からないけど、あえて言うなら直感かな?

――本作に出てくるモンスターの主観映像は、ブルーの色彩でとても印象的です。その辺のこだわりについて教えてください。

まあ私の映画の場合、血が大量に流れて、当然赤いから、逆に青がいいと思ってやっているんだろうね。まあ青は癒し系の色なので、赤の強烈な映像の間に使えば、ショックが緩和されるじゃないかというのもある。特に深い意図はないよ。ハハハハ。

――低予算とは言いながら、映像自体はこれまでの作品の中で、最も綺麗に感じました。

35ミリで撮影しているからね。褒めてくれてうれしいよ。

――主演女優チャーリー・ダニエルソンとの出会いについては?

彼女はマンハッタンで歌手や俳優として活動していて、以前から知っている知人の紹介で知った。そこで脚本を書いている途中、最初の30ページを読んでもらったんだ。そしたら彼女は主人公をとっても気に入ってくれて、自分から出演したいと言ってきてくれた。我々も彼女のことがとっても気に入ったので、キャスティングしたんだ。無垢で美しく、イメージにぴったりの女優だった。キャスティングには難航すると思ったからラッキーだったよ。その後は脚本を書きながら。週に1回程度会って、役柄を作り込んでいった。今では彼女以外の女優は絶対考えられないね。

――ジェニファーは感情に起伏が激しく突如、豹変したりします。ハイテンションを演出するため、どのような指導をしたのですか?

脚本を作る段階で一緒に作業をしていたから、その辺はよく分かってたようだ。私が何を求めているか、そのことに対する理解は、撮影時には十分出来上がっていたよ。だからあえて、こちらが何かを改めて要求することはなかった。

次回作?まだ分からないね。企画はいっぱいあるんだけど、予算がないんだ(笑)

――撮影自体は楽しかったですか?

現場のマンションは暖房もなかったし、実際は大変だった。撮影は11月から12月にかけてだったので、とても寒かったし、予算もなかった。とにかく厳しい状況での撮影でした。でもみんな作品を完成させようと、一所懸命だった。空腹だったり、疲れていたり、服も汚れていたけど、泥だらけで撮影を続けていた。低予算の映画を作ることは素敵なことでも楽しいことでもなく、ただただ厳しいことばかりだった。

R.A.トーバーン(プロデューサー):まあお金がないんで、仕方ないことだ。予算があれば、何でも手配して来る人を雇うこともできたでしょう。でも監督をはじめ、スタッフ、キャスト全員がすべきこと以上の仕事をしていたと思います。35mmで撮影するということは、他の部分でカットせざるを得ないので、その辺は全員でカバーし合ったのが実情です。

ヘネンロッター:例えば女優が血糊をかぶってしまう場面の撮影では、ベタベタしてしまって、大変だろう?そんな血糊を洗い落とすのもままならない状況なんて、メジャー作品では絶対あり得ない。でもそんなことをいちいち文句を言うこともなく、頑張った結果、あれだけのものが仕上がったのだ。

――本作までに我々ファンは16年待たされた訳ですが、監督の次回作までまた16年待たされるのでしょうか?

まだ分からないね。企画はいっぱいあるんだけど、予算がないんだ。ハハハハ。あんまり語ってしまうことはできないが、ドラッグやモンスターが出てくる作品になるのは間違いないだろうね。

P:『バッド・バイオロジー』と同じクラスの予算でいいなら、すぐ集めるよ(笑)。

 

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