
俳優・西島秀俊ほど映画に愛されている男はいない。デビュー以来数々の話題作に主演・出演し、名だたる名匠と仕事をともにした。名優と呼ぶにふさわしいキャリアだが、西島は新たな挑戦をし続けている。『東南角部屋二階の女』も西島にとって発見の多い作品だった。後発の『休暇』と併せてさまざまな話を聞くことができた。(取材・構成・撮影/床板京平)
メチャクチャな人間でも、自然に観えるならうれしい
―― 『東南角部屋二階の女』をご自身で最初に観たときはいかがでしたか?
一緒に観ていたマネージャーに“この作品すごいですよね?”と言ってしまいました(笑)。映画を観ながら自分の中に不思議な感覚が起こって、それが何かはわかりませんが、この作品がすごい力を持っているような気がしたんです。時間が経つにつれて、だんだんと自分の中で大きくなっていくだろうなという予感がしています。
―― 野上という男は西島さんそのものと錯覚するくらい自然でしたね(笑)
脚本を読み、彼はいろんなことをどうでもいいと思っているメチャクチャな人間で、ツジツマのまったく合わない人だなと思いました。僕もメチャクチャな人間かもしれないけれど(笑)、それほど自分とかぶっている部分はないと思っています。だからどう自然に見せようかと思いましたが、自然に見えるのなら良かったです(笑)
バックグラウンドがない役に挑戦をすることができた
―― ところで、別の映画の『休暇』では、死刑囚の役を演じられましたね。
死刑囚の感覚は、当然ですが、まったくわかりませんし、バックグラウンドが一切書かれていない脚本でした。刑の執行を待って過ごすという感覚は想像したってわからないし、共感を覚える部分があるなどと口が裂けても言えないようなキャラクターですよね。それにどうアプローチしていくか、ということに挑戦できた作品でしたね。
―― こういう作品の撮影現場の雰囲気というのは、どんな感じでしょうか?
僕はひとりぼっちでした(笑)。刑務官役のみんなは、けっこう楽しくやっていたと思います。そういうキャラクターだからですが、僕の場合は他の人たちと細い線で繋がっているかどうかもわからないくらいじゃないですか。触れ合ったとしても、何を考えているかわからない状態で断絶してしまう。だから現場でもそうでしたね。
映画で生まれ変わるような体験がこの先もあると思う
―― 映画人としての西島さんが考える“映画の醍醐味”とは何でしょうか?
僕は映画館で映画を観ることが大好きなんです。知らない人たちと一緒に観る、知らない人と一緒に体験するということが大好きなんだと思います。まったく知らない人たちと笑ったり、泣いたり――人生が変わったなと思ったりもする。周りの人たちもきっと同じように思っている。そういう体験ができるのは映画館ならではです。
―― 抽象的な質問ですが、西島さんにとって映画とはどんな存在でしょう?
難しい質問ですが、映画で考え方が変わることがたくさんあったし、映画に助けられたこともありました。たぶん映画が大好きな人は似たような経験をしていると思います。映画で生まれ変わるような体験をしたとか、ね。僕自身、そういう体験がいまだにありますし、これからもずっとあるでしょう。いつも衝撃を受けていますよ。
プロフィール
西島秀俊(野上孝 役)
1971年3月29日生。東京都出身。1994年、『居酒屋ゆうれい』で映画デビュー。以降、黒沢清監督の『ニンゲン合格』(99)、北野武監督の『Dolls ドールズ』(02)、萩生田宏治監督の『帰郷』(05)など数々の作品に出演。今後の待機作として『蟹工船』、『ゼロの焦点』など。名実ともに日本映画界を代表する俳優。
バックナンバー
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