ジャッキー・チェンの主演最新作『新宿インシデント』は、かつてないほどダークな主人公をジャッキーが熱演していることでも話題の一作だ。なぜ世界的なアクション・スターが得意のカンフーを封印して、新宿・歌舞伎町の裏社会を生きる男を演じたのか。俳優として新たな挑戦に身を投じたジャッキーが赤裸々に語ってくれた。(取材・構成/床板京平)

いつも自分のイメージを変えていきたいと思っていた

―― 今回のようなハードなドラマへの挑戦をいつ頃から考えていましたか?

かなり前からずっと考えていたことだった。よくアラン・ドロンの映画などの人の映画を観ていて、いつも自分のイメージを変えていきたいと思っていた。自分の年齢に合わせて少しずつ変化を出していければいいよね。

―― すべてを任せたとはいえ、ご自身の意見が多少は反映されていますか?

インする前に僕は口を出さないことを約束したよ(笑)。香港の映画界では有名な話だけれど、1~2週間、まず監督に撮ってもらい、仕事がよくなかったらクビにしてしまうんだ。映画が完成したときに名前は出すけどね。その監督にお願いしてダメな場合は、会社にも迷惑がかかるし、自分にも迷惑がかかるし、みんなが迷惑する。ただし、今回はアクション面はチン・ガーロウに任せ、現場での演出はイー・トンシン監督にすべて任せたよ。

似たような話は世界中のいたるところにあるんだ――

―― 中国では上映禁止でR-指定と、そこまでしてなぜチャレンジしようと?

若い人たちにカンボジアやベトナムなどの移民が、決していい状況にないということを知ってほしかった。中国でも上映はできるけれど、暴力的な部分をかなり切らないとダメだろうね。最初にイー・トンシン監督と相談して、ソフトな仕上がりにして一度観てみたけれど、すごい中途半端な感じになってしまったんだ。トンシン監督に完璧なバージョンでいいのかと相談されて、僕も監督を何度も経験しているから最終的にはOKを出したのさ。

―― ストーリーにご両親のイメージを重ねて描いた部分などはありますか?

いや。そういったことを考えたことはないよ。撮影中は世界中のいろいろな場所へ行って、新宿のような環境というか、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカでも同じような状況を目の当たりにしているよ。ベトナムやカンボジア、アフリカなどでは、この映画よりももっともっとすごい現実がある。麻薬や不法労働などのことだ。この映画では中国人のストーリーしか描かれていないが、似たような話は世界中のいたるところにあるんだよ。

『新宿インシデント』で僕のイメージを変えてほしい

―― 下水道に流されていくシーンが衝撃的でしたが、撮影は過酷でしたか?

不法入国で身分を持たず、悪事を働いている人の最期は、あのようになることを言いたかった。大変だったのは気温がマイナス6~7度ぐらいで、すごい寒かったこと(笑)。僕はマイナス15度で氷の張った池に落ちたこともあるから、竹中さんを心配していろいろな準備をしてあげたよ(笑)。撮影は1日で夜。水の中に入って出ての繰り返し。中国の蘇州にセットを組み、あのシーンだけのために竹中さんにも中国に行ってもらったんだ(笑)

―― アクション俳優というイメージがフラストレーションだったのですか?

いままでずっと感じてきたことさ。だから『新宿インシデント』で僕のイメージを変えてほしいんだ。アクション俳優の命はすごい短いので、僕がいままでアクション俳優でやってこれたのは、ほとんど奇跡に近いことだと思う。幸運なことに人から評価され、そのなかでも少しずついろいろなことをやってきて多方面に活動が渡っていることはよかったと思う。将来的には俳優として、アクションもできる俳優として頑張って行きたいと思う。

 

プロフィール

ジャッキー・チェン/成龍(製作総指揮・鉄頭 役)

1954年生。香港出身。1976年、『スネーキーモンキー/蛇拳』でスターに。監督・主演した『ヤング・マスター/師弟出馬』(80)で香港映画史上最高の興行成績を上げ、『プロジェクトA』(84)、『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(85)などメガヒット作を連発する。世界を代表する東洋人スターとして不動の地位を築いている。

バックナンバー

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作品紹介

『新宿インシデント』

監督:
イー・トンシン

出演:
ジャッキー・チェン、ダニエル・ウー、ファン・ビンビン、シュー・ジンレイ、竹中直人、加藤雅也、峰岸徹、倉田保昭、長門裕之