『神童』『コドモのコドモ』など作品が軒並み映像化されている。さそうあきらによる短編連作を、『百万円と苦虫女』『赤い文化住宅の初子』のタナダユキ監督が映画化した“性”春コメディ『俺たちに明日はないッス』が完成! セックスのことしか頭にない高校生たちの青春を赤裸々に切り取ってみせたタナダ監督に話を聞いた。(取材・構成・撮影/床板京平)

10代の痛み、イヤな青春時代を体で覚えているうちに撮れる題材だったと思った(笑)

――『俺たちに明日はないッス』の映画化に対しては、並々ならぬ熱意があったそうですね。

原作を読んだのは4~5年前ですが、どうしても映画にしたくて仕方がなかったんです。自分でもどうしてそこまで思いが強いのか不思議に感じていたのですが、一言で言ってしまうと男子に対する尊敬の念です(笑)。バカで一生懸命でかわいくてかっこいい――そんな男子たちの映画を撮りたくてたまらなくなったんです。

――高校生の青春ないし“性”春を描くにあたって、ご自身の年齢的な焦りもあったのですか?

はい。年齢的な要因として、今じゃないともう撮れないような気がしました。もっと年月が経てばきっと上手く撮れる。ですが、大人の目線になってしまうと思うんです。R指定だし、原作は短編だしで、二の足を踏まれがちなネタですから、いろんな人に撮りたい、撮りたいとお願いして(笑)。ようやく映画化が実現しました。

――映画監督として“撮る技術”が進歩してしまうと、“撮れないもの”も出てきてしまうと。

10代の痛みを覚えているうちに撮りたかったんです。あの、10代のモヤッとした感じ(笑)。感覚的ですが、非常に重要なことだと思います。よく“昔は良かった~”なんてボヤキを耳にしますが、私には10代はまったくおもしろくなかった(笑)。イヤな青春時代を体で覚えているうちに撮れる題材だったと思ったんです。

人生って、挫折してナンボ。
私は、そういう人の気持ちのほうに共感できる――

――『俺たちに明日はないッス』に限らず、監督としてどのような題材に惹かれるのですか?

監督としての野心ってほとんどないと思います。自分がおもしろいと思えるものを撮りたい、そう思えないものは撮らない、そういうスタンスが、野心といえば野心でしょうか(笑)。関心があるのが、ままならない感じの人、のっぴきならない感じの人、人生が思い通りにいっていない人。そいういう人たちに共感しますね。

――人生に挫折している人々といいますか(笑)、あまりハッピーではない人たちばかりですね。

“何かを強く願えば叶いますよ”って言うのはカンタンですし、何かを強く願うことはとても大切なことだとは思いますけど、それが叶わなかったときはどうすればいいんだろう?って思うんです。そこに興味があります。人生って、挫折してナンボじゃないですか。私は、そういう人の気持ちのほうに共感できるんですよね。

――確かに、現実の人生でも成功より失敗している状態のほうが、たくさんドラマがありますからね。

逆に、挫折しない完璧な人間の姿を描いてもまったくおもしろくないじゃないですか(笑)。路線は違いますけど、『スパイダーマン』みたいな、ダメ男が経験を積んでヒーロー化していく話っておもしろいですよね。葛藤して、苦しんで、もがいている人って、どこの国でもみんなの共感を集めるものだと思います。

映画を撮り終わった後に成長した自覚はないけど、
毎回が勉強の場です

――そもそも、そのようなテーマに興味が沸くようになった原体験のようなものがあったのですか?

幼少の頃からままならない人が周りにたくさんいたことが影響していると思います。それでもみんな頑張って生きてきた(笑)。ただ、映画にメッセージを込めようなどと考えたことはなくて、そうやって上手く言葉にできないがために映画を撮っているわけなんです。“よかったら観てください”としか私には言いようがないんです。


――その“ままならない人”たちというのは、よくよく観察すると、エネルギーがありますよね(笑)。

なんだか世間からハミ出しちゃったような人たちなんですよね(笑)。ただ、ハミ出すことも勇気が要ることだと思うんです。凡人にはできない。ある種の才能だと思います。たとえば、親兄弟もいて、いろんな人間関係があって、そういうのを全部捨ててしまっている人も中にはいるわけですから。そうとう強い、タフな人たちだと思います。

――最後になりますが、『俺たちに明日はないッス』を経て監督としてどのような成長がありましたか?

『俺たちに明日はないッス』に限らず、毎回、映画を撮り終わった後に、自分が成長したっていう自覚がないというか、成長したって思えるほど甘くはなかったなと感じて、しんどくなってしまうんです(笑)。完成した映画を観るのが自分では辛かったりするんですが、毎回勉強の場だと思って、今後も頑張りたいですね。

タナダユキ(映画監督)

1975年生。福岡県出身。2001年、初監督作品『モル』が「ぴあフィルムフェスティバル」でグランプリ含む2冠を獲得。2004年には、伝説のフォークシンガー、高田渡のドキュメンタリー『タカダワタル的』がヒットする。そのほか、エロスがテーマの『ラブコレクション』のシリーズ企画で『月とチェリー』を監督。蜷川実花監督の『さくらん』で脚本を担当。『赤い文化住宅の初子』『百万円と苦虫女』など精力的に作品を撮り続けている。

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