
世界的なアニメフェスティバルの権威、アヌシー国際アニメーション映画祭にてアヌシー・クリスタル賞(最高賞グランプリ)を受賞した「pieces of love vol.1 つみきのいえ」。その生みの親で、鉛筆タッチを活かした繊細かつ独創的な世界観のアニメーションで国内外で高い評価を獲得している、加藤久仁生監督に話を聞いた。(取材・構成・撮影/床板京平)
※このインタビューは2008年10月に実施されたものです
受賞後に、心動かされたというメッセージをたくさん聞いて
うれしかったです
――「pieces
of love vol.1 つみきのいえ」のDVD発売を控え、今の心境はいかがですか?
「pieces of love vol.1 つみきのいえ」は去年作った映像作品ですが、それがDVDとなって世に出て行くことは素直にうれしいです。DVD化されるということで、アイテムとしてずっと残っていきますし、作品に対して責任を感じないといえばうそになりますが、本当にありがたいことだと思っています。
――アヌシー国際アニメーション映画祭で、最高賞グランプリを受賞したことも話題になりました。
まさか自分がこのような賞を獲るとは思ってもいなかったので、本当に驚いてしまった、というのが正直な感想でした。フランス語で授賞式が進行していたので、会場の様子を具体的には把握していないのですが、心動かされたというメッセージを後からたくさん聞いて、本当にうれしかったです。
――良い映像作品は国境を越えると言いますが、まさにメッセージが届いたイベントですね。
まったく違う文化圏の人たちにメッセージが伝わったというのは、うれしかったです。ただ、クリエイターとしては、いろんなフェスティバルに参加すると反省材料も増えるんです。そのことで次回へ活かそうとする気持ちが強くなるので、賞もうれしいですが、次回作への意欲を掻き立てられるので、学ぶことも多いですね。
“人はどう生きるのか?”という意識を持っていないと
ダメなような気がします――
――「pieces of love vol.1 つみきのいえ」に込めた、監督なりのテーマは何ですか?
1人のおじいさんが主人公ですが、その人が人生を振り返ること、ですね。今現在おじいさんが生きていて積み重ねている“家”そのものが、おじいさんの人生を象徴しているんです。1人の人間の人生、生き様のようなことを、短い時間の中で象徴的に描ければいいなと思いました。その部分を一番に考えていました。
――そもそも、なぜそのようなテーマを描こうと思われたのでしょうか?
大まかなストーリーラインは、脚本を担当した平田研也さんが考えてくれて、それを土台に足したり引いたりして考えました。僕はもともとシンプルに描きたい希望があって、複雑な構成にせず、おじいさんの生きている姿勢、大切にしているものから、いろいろと学び、メッセージが得られればいいなと思っていました。
――人生や、生と死を感じさせるようなテーマに、もともと関心があるのですか?
“人はどう生きるのか?”という意識を最終的に問題意識として持っていないとダメなような気がするんです。結局、ベースとなるテーマというか、そういうものが僕の中にあるのだと思います。とくに強烈な原体験があったわけではないですが、今の社会を見ていると、みんなが考えなくてはならないような気がしますけどね。
僕らの作った作品は、最終的に受け取る方がいてこそ
完成するものだと思う
――また、ナレーションを人気女優の長澤まさみさんが務めていることも話題ですよね。
ナレーションを録るときに初めてお会いしました。もちろん、もともと存じ上げていましたが、本来はもっとコミュニケーションを取りたかったんですが……。長澤さんも大変だったとは思いますが、快くやっていただきました。プロ意識がすごい高い方で、お忙しい時間のなかでの完璧な仕事ぶりに感動しました。
――ところで、監督の今現在の仕事に対するモチベーションとは何でしょうか?
何でしょうか(笑)。有名になりたい、お金持ちになりたいっていう野望はほとんどなくて、もともと前に出て行くのが苦手でもあるんです。ただ、自分の名前や作品を世の中の人に知ってもらわないと、観てもらう機会もないので、そこは悩みどころです。おそらく、今後もそんなことを考えていくでしょうね。
――最後に、この仕事の醍醐味と、今後の抱負などをお聞かせください。
イメージしていたものがカタチになったときが一番楽しいですが、僕らの作った作品は最終的に観てくれる人がいて、その人たちがどう感じたのか、どう思ったかが重要だと思います。受け取る方がいて、作品は完成すると思うんです。難しいところですが、とりあえず今は作り続けることが大事だと思っています。
(C) 2008 ROBOT
プロフィール
加藤久仁生
1977年生。多摩美術大学在学中からアニメーションの自主制作を始め、同大学卒業後、2001年に映像制作会社ROBOTに入社。アニメーション作家を集めた同社のROBOT CAGEに所属、テレビ番組、WEBアニメーション、スポットCMなどさまざまなアニメーションを現在も手がけている。2008年、「つみきのいえ」が、世界最高峰のアヌシー国際アニメーション映画祭で短編作品に与えられるアヌシー・クリスタル賞(最高賞グランプリ)を獲得した。2008年10月24日(金)、東宝より「pieces of love vol.1 つみきのいえ」が発売(税込:1,995円)。詳細は公式サイトへ。http://www.robot.co.jp/pol/
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